フランス語 中国語 英語 語学 雑記

中国語やフランス語が英語に取って代わる事は有り得るのだろうか?

更新日:

ちょっと面白い噂を小耳に挟みました。

なんと、国際共通語の地位が中国語やフランス語に取って代わられる可能性があるとかないとか。

今回はそのような噂の信憑性について考えていきたいと思います。

結論: ないです

結論から言うと、そんな可能性はほぼないと思います。何故か? 具体的に説明します。

中国語の場合

まず、中国語の場合について考えてみましょう。

「中国語が国際共通語になる」というのは、中国の人口増加と経済発展を理由とした説です。

が、これは主に2つの理由でないと思います。

理由1

人口増加や経済発展が理由なら、とっくのとうに中国語が共通語になってないとおかしいから

中国の経済はここ30年くらいで目覚ましく発展してきました。人口も増えていました。

が。それはここ最近に来て徐々に頭打ちになってきています。これからは劇的に成長し続けるというより、ある種の安定期に入るものと思われます。

また、人口に関してはとうとう世界一の座をインドに奪われてしまいました↓。

India overtakes China to become world’s most populous country(The Guardian)

さて、これまで好調だった中国。では、中国語は世界共通語になりつつあるのでしょうか?

はい、言うまでもなくNoです。兆候すらありません。日本でも英語教育の改革云々で大騒ぎしていますが、英語の代わりに中国語を必修にしようなんて話は聞いたこともありません。中国語の重要性が高まっていることは確かですが、英語より重視する国はないと思われます。

というか、当の中国語(繁体字とか多少の違いはあるけれど)を使ってる台湾が英語教育にメチャクチャ力を入れたりしています。

The aim is to promote English language education as an international lingua franca on the basis of national language development, enabling Taiwan to maintain its important competitiveness in connecting with the world, Chen said.

Taiwan 2030 bilingual policy intended to boost nation's competitiveness(Taiwan News)

そして、もう一つの理由は既に登場したインドを中心とした南アジア地域の存在です。

理由2

インドが英語を捨てて中国語を使い始めるとか有り得ないから

人口で中国を追い抜いたインド。そしてその隣国であるパキスタンとバングラデシュ。これらの国の人口は現時点で、

インド 14億
パキスタン 2億4千万
バングラデシュ 1億7千万
計 18億1千万(2023/8/26時点)

Southern Asia Populationより

これらの国は旧英国領で英語がかなり浸透しています。インドやパキスタンの映画やドラマを見ていると、ヒンディー語やらウルドゥー語やらの中に単語どころか文が丸ごと英語になってる台詞がしょっちゅう出てきます。インドは多言語国家であり、英語も公用語に指定されています。

その上、インドと中国は国境問題を抱えていたりと関係がそこまで良好というわけでもありません。今の状況を見ても、今後の事を考えても、「中国語を共通語として使おう」などという流れはまず生まれないと考えて良いと思います。

その他の理由

南インドだけでなく、東南アジアにはベトナム、フィリピン、インドネシアとアルファベット表記を採用していて人口も多い国々が多くあります。マレーシアやシンガポールなど、英語だけでなく中国語も使われている国もありますが、人口はそこまで多くありません。ベトナム語は中国語と歴史的に関係が深い言語ですが、ベトナムもインド同様中国とは一筋縄では行かない関係性にあるため、外国人とのコミュニケーションに使う言語を英語から中国語にシフトしようとはしないと思われます。

南北アメリカ、アフリカ、中東地域などでも今更中国語を共通語として使う動機はゼロです。中国とのビジネスをする際には重要になる可能性もありますが、そもそも中東やアフリカに仕事に行く中国人は英語が出来そうな気がします。

また、中国語は今から世界言語になるには文字があまりにも複雑すぎます。世界を見渡すと、ベトナムやトルコなど漢字やアラビア文字由来の自国文字を廃してアルファベット表記を採用した国はあるものの、その逆はあまり聞いたことがありません。流れの早いインターネット上で英語表記ですら省略されることがある昨今、中国語が英語の地位を脅かすなんてことが起きる要素は皆無に見えます。

そもそも英語が爆発的に普及したのは英米が連続で世界覇権をとったことに加えて、インターネット上で使われるインフラやらアプリやらが大体アメリカ発だったからというのもあると思います。その一方でネットの中国語圏はかなりの部分が中国国内で閉じていると思われ、英語ほどの拡散性は見込めません。TikTokとかは流行っているようですが、使ったことがないのでどれくらい中国語と接点を持てるのか私にはよく分かりません😇

フランス語の場合

「フランス語が世界共通語になる」という説は「旧フランス領が多いアフリカがこれから発展するから」ということを理由にしているようです。なるほど、一見すると一理ありそうに見えます。

では、アフリカの国々で英語かフランス語かどちらが使われているか確認してみましょう。2015年の人口が多い順に10か国を並べておきます。なお、「主要言語」に関しては後ほど説明します。

国名2015年の人口(単位:100万人)2050年の予想人口(単位:100万人)現在の主要言語
ナイジェリア181411英語
エチオピア100191英語
エジプト94153その他
コンゴ民主共和国76197仏語
南アフリカ5573英語
タンザニア54138英語
ケニア4795英語
ウガンダ40106英語
アルジェリア4057仏語
スーダン3980英語
Africa 2050: Demographic Truth and Consequences Table 4を基に筆者作成

「主要言語」というのは、正直そこまで厳密に括ったわけではありません。公用語になっていたり、公用語でなくても結構広く使われていたりするようであればとりあえず入れた感じです。ここでは、「その国で英語とフランス語とどちらが強いか」さえ分かればそれで十分ですので。

さて、ピンク色にしたのがフランス語圏の国なのですが、なんと2つしかありません。これらの国の経済が他の国の英語使用をひっくり返すくらい発展するのでしょうか。私にはそうは思えません。

さらに、面白いニュースがあります。

2023/8/28時点

上記の表に2つあった仏語圏の1つ、アルジェリアが大学で使う言語をフランス語から英語に挿げ替えているではありませんか。オーマイガッ。

さらに面白いニュースが続きます。

2023/8/28時点

仏語圏の1つだったマリがフランス語を公用語から外してしまいました。

In June, Malian voters approved a new constitution proposed by the country’s military government that moved French from an official language to a working one.

The Washington Postより(太字は筆者による強調)

使用をいきなり止めるわけではないようですが、格下げには違いありません。

2023/8/28時点

最近クーデターのあったニジェールは極悪帝国主義者のフランス様を追放することに決めたようで、反仏という点では同じく旧フランス植民地のブルキナファソも同じです。

参考記事: アフリカの旧フランス植民地の地図(記事をちょっと下にスクロールすると出てきます)

上記の参考記事の地図上で、アルジェリア、ブルキナファソ、マリ、ニジェールを除くとアフリカのフランス語圏がごっそり減ることがお分かりになるかと思います。その上、この記事冒頭ではコートジボワールの偉い人が「アフリカのフランス語圏には未だに真の独立も自由もない」みたいなことを言っており、今後のアフリカにおいてフランス語への風当たりは強くなる一方かと思われます。しかも世界的に見れば英語の方が使ってる人が明らかに多く、アフリカの国々がフランス語にこだわる必要性が見当たりません。

というわけで、アフリカがどれだけ発展してもフランス語が英語にとって代わる要素はほぼないと思われます。

さらに、国連の資料で2050年に世界人口TOP5を占めると予想されている国々を見てみましょう。

国名2050年の予想人口(単位:100万人)英か仏か
インド1670
中国1313その他
ナイジェリア377
アメリカ375
パキスタン368
ソースを基に筆者作成

また言語のところが雑ですが、上位5か国は中国以外は英語の使い手と考えて良いでしょう。少なくともフランス語が強い地域ではありません。その上、中国にも今更英語をフランス語と取り換える理由はありません。

なお、ナイジェリアの人口が上記の2つの表で食い違っていますが、1つ目は引用元が2019年の資料であり、2つ目は2023年の資料なので多少データにズレが出たものと思われます。

とうわけで、アフリカそのものを見ても、世界全体を見ても、私にはフランス語が英語より強くなるという要素は皆無に見えます。南北アメリカ大陸やアジアを見ても、フランス語を共通語にする動機というものは全くないと言っていいでしょう。

まとめ

そんなわけで、一度浸透した英語の優位性が揺らぐことはほぼないかと思います😇

なお、本記事で引っ張ってきたデータや記事は全て英語のものです。これも私が推している「実践」の1つですね。調べものを全部英語でやるようにすると、単語帳や問題集やるよりよほど読解力も語彙量も増えます。あと、当サイトでは英語の素材をそのまま消費することを散々推奨しているので、引用文にも和訳をつけていません(多分引用文をすっ飛ばしても記事そのものを読むのにそこまで支障はないと思います)。

この記事では色々なデータをあちこちから引っ張ってきましたが、私の誤読やら思い込みやら勘違いやら調査不足やらその他諸々の理由であちこち間違っている可能性もあります。一応2日くらいかけて書きましたが、漏れてる要素等も多々あるものと思われます。

が、それらの勘違いや情報の漏れの可能性を差し引いても「英語の優位性がひっくり返る事は当分ないだろう」というのが本記事における私の結論です。

追記

この記事投稿してから3日も経たぬうちに(2023/8/30現在)またアフリカのフランス語圏でクーデターが起きた模様です。

繋がりが深いだけあって、フランスメディアはアフリカの情報を他より大きく取り上げる傾向があります。

-フランス語, 中国語, 英語, 語学, 雑記
-

Copyright© ホー太郎の語学ブログ , 2023 All Rights Reserved Powered by STINGER.