はい、本日はその昔どこかで見たような英語に関する都市伝説をいくつか思い出したので、その話をしようと思います。
"my name is"は「拙者、○○でござる」?
具体的にどこで見たのかは一つも覚えていませんが、以前、
「"My name is ~~"は『拙者、○○でござる!』みたいな古語表現で現代ではこんな言い方をするネイティブはいない、自己紹介は"I'm ~~"ですべし」
みたいな言説を方々で見ました。特に確認してませんが、多分今でもググればそんな感じのこと書いてるページがヒットするかと思われます。
さて、ここでハーバード大学の教授が2023年7月にした自己紹介を聞いてみましょう。
動画の16~22秒あたりで教授が
Hello, world. My name is David Malan, and this is CS50 Introduction to Cybersecurity for technical and nontechnical audiences alike.
と言っております。ほう、ハーバード大の教授が世界に向けた講義で古語を使っているのか、たまげたなぁ😂
次に、私が昨日たまたま見た「バイオハザードIV アフターライフ(原題 "Resident Evil: Afterlife")」という2010年に公開された洋画を紹介します。タイトル画面が表示された直後にこんなセリフが出てきます。
My name is Alice. I worked for Umbrella Corporation in a secret laboratory developing experimental viral weaponry.
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2010年にも映画で拙者が使われていた模様です。
また、最近読んだ小説には以下のような一節がありました。これまた2010年に出版された本です。
My name is Katniss Everdeen. I am seventeen years old. My home is District 12. I was in the Hunger Games. I escaped. The Capitol hates me. Peeta was taken prisoner. He is alive. He is a traitor but alive. I have to keep him alive...
Mockingjay (Hunger Games Trilogy, Book 3) 35ページより
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2010年のseventeen years oldピーポーの間では拙者言葉が流行っていた模様です。
"cutting-edge"は死語?
ずいぶん前の話(多分5年以上前です)でこれまたどこで見たのかについては全く記憶がないのですが、
「"cutting-edge"(「最新の」とか「最先端の」とかそんな意味だと思われ。"state of the art"も多分似たような意味)という表現は教材には出てくるけど、実際は死語で今は全く使われていない」
みたいな言説を見ました。
さて、ここで私が数日前(つまり2023年)に受け取ったAIハッカソンのお知らせメールを見てみましょう。
Join the 3D AI Models Hackathon!
One weekend to build AI apps with cutting-edge 3D generative models by OpenAI, Nvidia, and Stable Diffusion
あれれ、死語が2023年に使われています。不思議ですね。
それともう一つ、かくも有名なTIMEという雑誌にもこんな一文がありました。
Komatsu Matere, which is currently responsible for 15 percent of the textile industry in Japan, has long been acclaimed for its cutting-edge development of new clothing materials.
TIME Double issue Nov. 7/ Nov. 14 2022 37ページより
かの高名なTIME誌で死語が使われてる! 不思議!
ちなみにこのTIMEなる雑誌は日本の英語学習者界隈で
超難しい単語や構文が出てくる!
超上級者向け!
英語学習者の登竜門!
とかあちこちで「超難しい」と言われていたので、去年試しに一冊買って(上記の引用元はそれ)最初から最後まで全部読んでみたんですが、正直BBC, CNN, New York Timesあたりの記事と何が違うのかよく分からず、そんなにメチャクチャ難しいという印象はありませんでした。小説の紹介とかオーケストラの指揮者についての記事とか普段読んでないジャンルの記事には何だかよく分からないのも確かにありましたが、多分そういうのはTIME誌じゃないところで読んでも私にはよく分からないと思われます。
教訓: 日本語で書かれた英語のウンチクを真に受けないようにしましょう
私が最近このブログに書く記事では「語学の勉強はほどほどにしてとにかく実践をすること」を毎回推奨しているのですが(既にそうしている方がこのブログを読んでも特に得るものがないかと思われますが)、この記事でも結論は同じです。
この記事では私が以前どっかで見かけた「ネイティブはこんな言い方しない!!」系の言説がただの妄想であるということをバッチリ証拠つきで示しました。特に、"My name is ~~"なんて至る所で使われていますから、この手の都市伝説みたいなことを言っている人々というのは「日本語で書かれた英語に関する真偽不明の言説を真に受けてしまう人たち」、要するに「実際の英語に全く(あるいはほとんど)触れていない人々」であると考えて差し支えないと思います。泳いだことがない水泳の先生みたいなものです。ネイティブ向けコンテンツにろくに触れていないのにネイティブの言い方についてどうこう言えるというのは中々面白いです。バーベキューに行ったことがない私が語るバーベキューのウンチクみたいなものです。
私が「脱教材」を強烈に推すのはこういう理由でもあります。
ネイティブがどういう言い方をしてどういう言い方をしないのか、ということについて日本語で書かれた説明を読んでる暇があったら1文でも多く英文を読んだり聞いたりして自分なりの枠組みを構築していくことが重要だと個人的には思っています。
もちろん、教材を使った基礎学習が一切不要だとは言いません。というより、私自身が外国語学習の序盤に基礎教材をがっつりやったりしています。が、教材や試験の世界にずっといるというのはあまり意味がないです。
↓の記事に教材学習をやりまくっただけの言語がどういう末路を辿ったか、私の実体験が書いてあります(スペイン語・チェコ語の項を参照)。