皆さん、The Hunger Gamesという映画をご存じですか?
私は生まれてこの方日本の芸能とか流行りとかに毛ほども関心がなく、小学校から高校あたりまで友達と話すことが何もねぇというかそもそも友達なんていねぇという愉快な環境の中を生きてきましたので(まぁ今も友達はいないんですが、クラスに押し込められてた子供の頃と違って何も困らないのが現在のいいところです)、この映画が日本でどの程度の知名度を持っているのか見当もつきません。が、多分大して流行ってなくて知ってる人もそこまで多くなかろうという前提で話を進めさせていただきます。
で、なんでいきなりそんな映画の話を持ち出したかというと、私が英語で(間に一切日本語を挟まず)どっぷりはまった初めての作品だからです。
そんなわけで、今回は「私と英語とThe Hunger Gamesと」という金子みすゞをパクろうとしたらやたらと長くなってしまったテーマでお話したいと思います。この映画についてはとりあえず「10年ちょっと前くらいのアメリカ映画である」ということだけ認識しておいてもらえれば大丈夫です。
なお、同作品のネタバレは特にしない予定ですので興味のある方も安心してお読みください。
(その代わり鬼のように自分語りが出てきます😂)
奇跡の如く日本語が一切介在しなかった私とThe Hunger Gamesとの関係
私が最初に"The Hunger Games"という映画の存在を認識したのは遥か昔、10年以上前にアメリカのYahoo!を見ていた時期でした。当時の私の英語力は大学生の頃にとった英検2級と昼寝をしながら受験したら420点だったTOEIC、洋書を100ページ読むのに半年かかり、読んだ内容の理解度は3割あれば多い方、みたいなレベルでしたので、読めるニュースも限られておりました。
そんなわけで、洋画に特に興味があったわけでもない私が映画の記事なんて開くはずもなかったのですが、当時のアメリカではよほど流行っていたようで、Yahooのトップページのニュースタイトルにこの映画がしょっちゅう出てきて全く認識しないというのは無理な話でした。当時はただ、この映画タイトルを認識しただけでした。
月日が流れ、それから4年か5年か6年くらい経ったころ、Netflixという新しい玩具にはまっていた私は期せずしてこのThe Hunger Gamesという映画と再会します。その時点で既に映画が4作あり、続編がぞろぞろ出ていたことが判明します。
当時、英語のリスニング力が大したことなかった割に背伸びをして洋画を日本語字幕なしで見ると決めていた私は、これら4作品を「徹夜・字幕なし・連続」で見るという狂気的な行動に出ました。ぶっちゃけ内容はほぼ理解できず、4作品見たけど少しでも記憶に残ったのは一作目だけ、(徹夜で意味不明なものを見続けたので無理もありませんが)という惨状になってしまいました。
で、この時もそんな雑な見方をしてほとんど何も分からず記憶にも残らずというそれだけで終わりました。この時に理解できたのは「主人公がバトルロワイアルみたなのさせられる話」「何やら悪の帝国が主人公サイドと戦うらしい」とかその程度でした。
転機となったのは今年(2023年)の6月上旬にふらっと立ち寄った古本屋でした。洋書コーナーをぷらぷらしていたら棚に"The Hunger Games"の背表紙が。「あの映画、小説が原作だったのか」とか今まで全く知らなかった事実を突然突き付けられた私は「値段安いからとりあえず買ったろ」という実にテキトーなノリでレジに向かったのでした。
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そんなわけで、今年に入って原作の小説を読み始めるまで、私は特に何を意識したわけでもないのにこの作品に関する日本語字幕やその他の日本語情報と一切の接点がない、という状態でした。このことが後々(個人的にですが)結構重要な意味を持ってきます。
そもそも私は日本語ですら小説なぞ読まないという話
タイトル通り。私はこれまで30年以上生きてきたのですが、小説やら文学やらその類の本は数えるほどしか読んだことがなく、その上そのうち3割くらいは途中で投げています。文章で書かれた架空の話にあまり興味が沸かない上に、読んでも登場人物が覚えられないとか今の場面に何人登場してるのか分からないとかそんな感じでした。ノンフィクションとかは数え切れないほど読んできましたが。
そんな私が英語で初めて小説を読み切ったのは去年(2022年)10月あたりの話。Netflixで流行っていた"The Queen's Gambit"というチェスの話でした。ところどころ分からないものの、9割くらいは理解できました。なお、Netflixの作品は未だに見ておりません。
その結果、今年になって買ったThe Hunger Gamesは私が英語で読む小説の2冊目ということに相成りました。
英語で読んだ方が小説は分かりやすい
私は日本語の小説を読んでいるとすごい速さで何がなんだか分からなくなりがちなのですが、英語だと思ったよりよく分かる気がしました。理由は何かというと、英語だと文の主語を毎回示してくれることです。単数形とか複数形とかを示してくれるのも地味にありがたかったりします。私は割と細かいところまで言われないとすぐに「今登場人物何人出てきてるんや・・・」とか言いながらすぐに混乱してしまいます故。
「日本(語)で出来ないことが外国(語)で出来るわけがない」とか言う人を時々見かけますが、そんなものはただの戯言です😂 私にとっては小説の読解やプログラミング学習は英語でやった方が確実に分かりやすいです。そもそもそういうこと言ってる人って外国(語)で何かしたことなんてなさそうな人ばっかりです。
好奇心で一巻を読破
さて、本屋で安かったからテキトーなノリで買ったただの小説、ということで私は正直「この本は最悪読み終わらなくてもいいや」とか思っていたのですが、何となく読んでるうちに「これ最後どうなるんだっけ?続き!続きをはよ!」みたいな感じで気づいたら真夜中に寝落ちするまで読み続けるというドーパミン回路が暴走して止まらなくなった人みたいになっておりました。そんなこと言ってる割に読み終わるのには3週間くらいかかったのですが、これは前半をだらだら読んでいたせいです。中盤以降は怒涛の勢いで読んだ記憶があります。最後の方は無理やり全部読もうとしたものの、「もう夜中の2時・・・これから最後の30ページを読み切るのは無理だ、ぐはっ」みたいなノリで寝落ちして、翌朝起きた瞬間に猛然と残り30ページを読み切りました。
映画の一作目を見る
さて、そんな感じで一作目を謎の熱意で読み切った私は、以前Netflixで見たもののなんだかよく分からず、記憶も曖昧だった映画を改めて見ることにしました。小説を読み切ったのだから内容の理解は容易に違いないと思いましたが実際その通りで、というよりも原作の小説を読んでいなかったらそもそも理解できなかったであろう回想シーンとかも結構ありました。小説で読んでもいまいち理解できなかった地形の説明などは映像で見たおかげで理解が深まったりして、小説と映画をセットで見るのには相乗効果があるなぁと感じた次第です。
2冊目と3冊目はスピーディーに読了
さて、この本はTrilogy、つまり三部作です。2巻と3巻があります。流石に何十巻もあったら読む気は失せたと思うのですが、残り2冊となると俄然読む気が沸いてきます。
しかも、Discordで友人のブラジル人にこの本のことを話したら
「あー、それ2015年前後にブラジルでも結構流行ってて、俺も映画見たわ、面白かった」みたいな反応をもらいまして、「よし、南米でも通じる話のネタゲットだぜ☆」みたいなノリでKindleストアで2巻(Catching Fire (Hunger Games Trilogy, Book 2))の電子ブックを注文したのでした。円安のおかげで古本屋で買った1巻の5倍くらいの金額が消し飛んで行きましたが仕方がありません😂
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2巻は他の実用書(これも英語)と同時に読み進めて12日間で読み切りました。実用書読んでた時間を引いたら多分1週間くらいで読み切った計算になるかと思います。
3週間かけて読んだ1巻と比べると物凄い速さで読んだ感があります。
そんな感じで通常の3倍の速度で2巻を読み終えた後に映画の2作目を見ました。原作を読んでいると各場面の主人公の心中などがよく理解できて良いな、などと考えました。そもそも私、今まで映画を原作の小説とセットで見るという経験自体したことがなかったのですよ。ぶっちゃけ文字で何でもかんでも説明しないといけない小説よりも映像で色々なことを一瞬で見せられる映画の方が色々詳しく表現できるだろうと思っていたのですが、実際は全く逆でした。映画の方が原作の小説のあちこちを端折って薄めているのです。このことは私にとって新鮮な驚きでした。
その後、2巻と併読していた実用書を読み切るなり3巻(Mockingjay (Hunger Games Trilogy, Book 3))を購入し、これまた一週間で読み切りました。値段が何故か2巻の倍くらいだったのでグエーっとなりましたが、買わないという選択肢は最早ありませんでした。
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読んでる間はとにかく続きが気になったものの、2日や3日で読み切ることはできませんでした。私の場合日本語の本は1日で500ページくらい(普通の新書2冊くらい)読めるので、400ページ弱の洋書を読むのに1週間かかるというのはまだまだネイティブ並みの読解速度が遠いということを意味します。何冊読めば1日で1冊読めるようになるのでしょう。謎です。
古本屋で1巻を買った日から3巻を読了した日までの日数は僅か45日でした。私が小説を読み慣れていないことを考えると快挙といっていいでしょう(そしてこの間にこれら3冊とは関係ない洋書も1冊読了しています)。
ところで、Amazonで2巻を買うときにこのシリーズが"Young Adult"に分類されていることに気付きました。私はもう四捨五入すると40歳になってしまう年齢なのでどうみてもYoungではありません。本当にありがとうございました。でも英語の能力はネイティブのYoung Adultより遥かに低いのでセーフ(何が)。ヤングアダルトってどういうジャンルなのか私はよく分かってないんですが、日本で言うライトノベル的な位置づけのものと考えていいんですかね?
で、3巻を読み切った後はまた映画を見ました。3巻は内容が盛りだくさんだったせいか、映画は2本立てになっておりました。ヤングアダルトの映画を「Finnick😭」とか言って泣きながら見ている怪しい中年男性がいたら多分私です😂
全ての要素が英語で構築された世界観
さて、他の人にとってはほぼ意味ない感じの私のThe Hunger Games歴を紹介してきたのですが、ここまで読んでくれた人はいるんでしょうか😂
それはさておき、この物語は小説3冊、映画4本の登場人物、各場面、心理描写、映像、ストーリー、バックグラウンド等のあらゆる要素が英語で構成されており、私は日本語字幕や邦訳の類を一切目に入れませんでした。日本語を一切介さずにこれだけの量の世界観を脳味噌に取り込んだのは初めてのことであります。
これの何が良かったかというと、知らない英単語とか英語表現とかが出てきた際、それらの要素を登場人物、場面、背景、等々、莫大な文脈情報とセットで覚えられたことです。しかも同じ単語や表現が繰り返し出て来ることも珍しくないので、復習機会も勝手に得られたりしました。
語学学習においてはたいていの場合文法や単語が強く意識されますが、実際にはこの文脈というものが極めて重要だったりします。脳味噌は文脈の一切ないバラバラの情報を覚えるようには出来ていないため、バラバラのまま単語とかを覚えようとしても瞬く間に記憶から消えていきます。が、大きな物語の一部として色々な要素と組み合わさった状態であれば同じ単語でも、単語帳でバラバラに覚えるより極めて記憶の維持が容易になります。
「思い出して自由自在に使いこなせる」という状態にまでになる単語や表現は多くはありませんが、少なくとも「読んだら分かる」程度になるものは多々あります。多読を繰り返しているとそういう表現が増えていくので、読むのが徐々に速くなっていきます。私も4年前くらいには洋書1冊読むのに半年とか1年とかかけてましたが、最近は「1週間あれば大体1冊読み終わるやろ(適当)」みたいなノリでぽんぽん読めるようになってきたので、今後は1日1冊を目指してさらに読んでいきたい所存です。
まとめ
映画の字幕などの日本語を一切介さなかったことにより、私の脳味噌は膨大な英語のインプットを基に一つの世界観を構築することを強いられました。上述した登場人物やストーリー展開など、様々な要素を全て英語で矛盾なく組み合わせていくにはそれなりにエネルギーが必要だったと思います。分からなかったり誤解したりで「何かヘンだぞ」みたいなことがあっても、その修正に使う情報も全て英語です。このような経験を重ねていくことで、「日本語のオマケとしての英語」ではなく、「日本語を一切関係させずに使える英語」が脳に定着していくことでしょう。これはネイティブに近い脳味噌を構成していくということに他なりません。
日本語を間に噛ましてしまうと、脳味噌は「なんだ、日本語で大丈夫やん、面倒だから英語のところはテキトーにスルーしたろ」と省エネに走りがちなので、何語をやる場合でもとにかく早めに日本語を抜いてやることが重要だと思います。ポイントは、「英語そのものを目的にするのではなく、英語を媒体にして何らかの目的を追求する」ことです。
今回のThe Hunger Gamesについて言えば、物語を理解して楽しむのが目的であり、途中で出て来る見知らぬ英単語を覚えるのはオマケでした。が、そのオマケ状態の方が単語をサクサク覚えられるのですから、何の悪いことがありましょう。
私が最近教材学習や試験勉強にかなり否定的な見解を持つに至った理由はこの辺りにあります。おそらくこれは語学に限らず、割といろいろな学習事項に当てはまると思います。私の個人的な興味で言えば世界史とか国際政治とかプログラミングとか割と色々ありますが、どれもこれも「勉強」して無理やり覚えようとしても全く上手く行きませんでした。短期的には多少できるようになっても、少し放置すると瞬く間に忘れます。
そんなわけで、外国語を身に着けたいと思ったら頭の中に可能な限りその言語だけの情報空間を構築してみることをお勧めします。もちろん、学習初期にはそんな余裕はないでしょうから(私も今すぐアラビア語で同じことしろと言われたら氏にます)、できる範囲で少しずつ、ということにはなるでしょうが、とにもかくにも新しく覚えた事項を実際に使って(これには話したり書いたりだけでなく、読んだり聞いたりも含まれます)現実の文脈に落とし込んでいくということが重要です。