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ペルシャン・レッスンから外国語学習法を学ぼう[その1][注: ネタバレあり]

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注: 本記事には映画「ペルシャン・レッスン」の盛大なネタバレが含まれています。ネタバレを見たくない方は閲覧を控えることをお勧めします。

語学学習勢の皆様、「ペルシャン・レッスン」という映画をご存知でしょうか?

ご存じない方は↓をどうぞ。

公式サイト
何故かは知りませんが↑の字幕ところどころ間違ってます。公式なのに。
最初の台詞は「収容所を通過していった人数は?」で、48秒の台詞は「架空の単語を沢山作らなければ」が正しいはずです。

去年(2022年)の今頃(6月)にたまたまこの映画が11月に日本で公開されると知ってワクワクが止まらなくなり、11月に公開されるなり自宅から電車で2時間近くかかる立川の映画館まで見に行ってしまいました。

 ナチス親衛隊に捕まったユダヤ人青年のジルは、処刑される寸前に、自分はペルシャ人だと嘘をついたことで一命を取り留める。彼は、終戦後にテヘランで料理店を開く夢をもつ収容所のコッホ大尉からペルシャ語を教えるよう命じられ、咄嗟に自ら創造したデタラメの単語を披露して信用を取りつける。こうして偽の<ペルシャ語レッスン>が始まるのだが、ジルは自身がユダヤ人であることを隠し通し、何とか生き延びることはできるのだろうか──。

ペルシャン・レッスン公式サイトのSTORYより引用

偽の<ペルシャ語レッスン>っていう設定が語学ヲタク的にはもう大ヒットでした。

『戦場のピアニスト』『シンドラーのリスト』に続く、ホロコーストを題材とする戦争映画の新たな衝撃作がついに今秋、日本に上陸する──。

ペルシャン・レッスン公式サイトのINTRODUCTIONより引用

その上、私はこの告知見た時点で映画のDVDは3本しか持っていなかったのですが、その3本のうち2本が「戦場のピアニスト」「シンドラーのリスト」だったのです。これはもう天の神が見ろと言っていたに違いありません。

ちなみにDVDの残りの1本はインド映画の「3 Idiots(邦題: きっと、うまくいく)」でした。3 Idiotsは名作過ぎてヒンディー語ちょっと覚えるくらい何回も見ました。なんと3時間くらいあります。

話が逸れましたが、そんな感じで遠路遥々立川まで映画を見に行きました。その結果、すっかりこの映画を気に入った私は欧米で既に発売されているDVDの購入を決意しました。

前述した「戦場のピアニスト」「シンドラーのリスト」は何故かドイツ人もポーランド人も英語を話すという謎の設定の映画だったのですが、「ペルシャン・レッスン」は違います。ドイツ人はドイツ語を話し、フランスで捕まった捕虜はフランス語を話し、イタリアから連れてこられた捕虜はイタリア語を話します。

私はドイツ語で面白いコンテンツを見つけるのにはこれまで完全に失敗しており(韓国語では成功した)、この映画が初めての熱中できるドイツ語コンテンツであったと言っても過言ではありません。そんなわけで、せっかくだからドイツ語を学べるようにドイツ語版のDVDを買うことに決めました。

Amazonで見たところドイツ語字幕がついていたので、これで聞き取れなかったドイツ語部分も分かるぞしめしめと思い、このDVD買うためだけにドイツのAmazonアカウントを作りました。

で、注文してから届くまで1カ月くらいかかると言われ、その上到着予定日になっても全く届かなくて脂汗をかく羽目になりましたが、到着予定日を3日過ぎたところでようやく届きました。

ワクテカしながら早速見たところ、とんでもないことに気づきます。

ん? ドイツ語字幕が出ないどころか字幕設定もないぞ???(^ω^)

Untertitel(字幕)はDeutsch(ドイツ語)になっていますが・・・

なんと、Sprachen(言語)の欄に書いてあるとおり、字幕はフランス語とかイタリア語とかが話されてる時しか出てこないそうなのです。/(^o^)\ナンテコッタイ

かくして、苦労して手に入れたDVDは映画館で見た日本語字幕の記憶と聞き取れないと詰むドイツ語音声のみで視聴するしかなくなってしまいました。

そんなわけで、本記事では映画の台詞の細かいところが聞き取れなかったり記憶が曖昧だったりという理由でところどころ記述が怪しくなっているところも出てきますが、記事内容が崩壊したりするほどではない(と思う)のでご安心ください。一応DVD買ってから30周以上は見ました。

再度注: 本記事には映画「ペルシャン・レッスン」の盛大なネタバレが含まれています。ネタバレを見たくない方はここ以降の閲覧を控えることをお勧めします。

なお、この映画はご覧の通りホロコーストの映画ですが、この記事で「戦争の悲惨さが・・・」とか「人の命が・・・」とかそういう話をするつもりは一切ないのでご了承ください。私は「シンドラーのリスト」を見る度にラストシーンで号泣するような人間ですが、だからといって他所で散々語られているようなことをわざわざここに書こうとも思わないので・・・。

あらすじと感想と語学学習と

さて、ここからはいよいよ本編のあらすじと私の感想を交えつつ、語学学習について考えていきます。あと、ドイツ語の説明もちょびちょび入れていくつもりです。なお、(偽の)ペルシア語学習と関係ないシーンは割とバンバン飛ばしていきますのでご了承ください。

再三繰り返しますが、ここから先はネタバレ入ってるので閲覧は自己責任でお願いします。

冒頭

まず、この映画は主人公のGilles(フランス語、読みはジル)がナチスに捕まって他のユダヤ人と走行中のトラックの荷台にいるところから始まります。隣にいた男がジルに「何か食う物持ってない?何?サンドイッチを持っている?この高級なペルシア語の詩集と交換しよう」と、持ち掛けてきます。ジルは最初はお断りするものの、結局その本と交換にサンドイッチを半分あげることにします。

本はアラビア文字(正確に言うとペルシア文字)で書かれていてもちろん読めません。ジルが唯一読めたのは本の最初のページにアルファベットで書かれていた"Bawbaw(父)"と"Reza Joon(レザ・ジューン、人名)"だけでした。この二語の意味を聞いた後、彼らが乗っていたトラックは森の中に止まり、乗っていたユダヤ人はジルを除いて全員射殺されてしまいます。

撃たれる瞬間を死んだふりでやり過ごすも、それを見破られて結局殺されそうになったジルは咄嗟に

Ich bin kein Jude! Ich bin Perser!! (私はユダヤ人ではありません! ペルシア人です!!)

豆知識1: ドイツ語では不定名詞文を否定する際に"I am not Jewish"というような言い方はせず、"I am no Jewish"という言い方をします。
豆知識2: この文は男性が言う形であり、もしもジルが女性だった場合は"Ich bin keine Judin! Ich bin Perserin!!"という形になります。

と叫び、さっきもらった本をドイツ兵に証拠として差し出します。

非常に運のいいことに、彼ら(ドイツ兵たち)の上官がペルシア人を探していて、部下がペルシア人を見つけて連れて行ったら肉の缶詰がいっぱいもらえるという文字通り美味しい話があったおかげで、ジルは一命をとりとめます。

コッホ大尉との対面

そのような流れで、ペルシア人を探していたドイツ兵の上官、Klaus Koch(ドイツ語、読みはクラウス・コッホ)大尉のもとに連れていかれたジル。そこで銃殺をチラつかせつつ圧迫面接をしてくるコッホ大尉。

Koch: Du heißt Reza. Joon, Nachname?
Gilles: (nickt)
Koch: Was heißt das, "Bawbaw"?
Gilles: "Bawbaw"... heißt "Vater" in meiner Sprache.

コッホ: お前の名前はレザで、ジューンは苗字か?
ジル: (頷く)
コッホ: この「Bawbaw」というのは何だ?
ジル: 私の言葉で「父」という意味です。

注: ドイツ語部分は私がリスニングしたものですので、間違ってる可能性があります。あと、訳文もかなりテキトーなので実際の映画の日本語字幕とはほぼ確実に違うと思われます。

この後も、「イランの首都はどこだ」、「イランでは何語が話されている?」等々色々尋問が続きます。イランで何語が話されているかなんて最近の日本人でも知らなそうです。インターネットもテレビもない時代に遠く離れたイランの首都やそこの言語を知っているあたり、ジルはおそらく教育レベルがそこそこ高い育ちなのではないかと思われます。(映画本編ではジルのバックグラウンドについてはほとんど何も語られません。)

その後も

コッホ: ペルシア語で「母」はなんと言う?
ジル: 母?
コッホ: そうだ、母だ。子供でも知っている言葉だ。答えられないなら射殺する。
ジル: "Anta".
コッホ: この本は読めるか?
ジル: 家庭内での会話しかしてないんで読み書きは教わってないです。
コッホ: じゃぁペルシア語で何か喋れ。

注: 前の会話と違ってドイツ語を書いてないのはところどころ聞き取れなかったからです。
豆知識: 偶然ですが、"Anta(アンタ)"は日本語でもアラビア語でも"You"の意味になります。ただし、アラビア語では相手が男性の時にしか使えませんが。この映画では「母」という意味のペルシア語になっています。

こんな感じで何とか話を繋いで最終的には

Es to forse sturdan esto pero barahtkey, immaresht umshukl bereb.
(人は太陽が沈みゆくのを眺め、気がついたらあたりが暗くなっていることに驚く)

なんかこんな感じの格言のようなポエムのような謎の文をデタラメに捻りだしたことにより、コッホ大尉を一応信用させることに成功します。訳文はドイツ語が十分に聞き取れなかった関係でかなりテキトーですが。

ちなみにこれ、「もう一回同じ文を言え」と言われたら詰んだと思うのですが、幸いコッホ大尉はそこまで疑り深くなかったようです。(ペルシア語の本を持ってたのが大きかったのでしょう。ちなみに、画面にこの本の中身が一瞬映るのですが、本来繋がって表記されるはずのペルシア文字が何故かバラバラに書かれており、ペルシア語を全く知らない人がこの本を作ったことが伺えます。)

そんなわけで、持ち前の機転で辛うじて圧迫面接を通過したジルは食堂の調理係に割り当てられ、昼はドイツ兵の食事を作り、夜はコッホ大尉に(全く知らない)ペルシア語を(命がけで)教えるというとんでもない状況に陥るのでした。

まとめ

本当はこの記事1つで完結させるつもりだったのですが、冒頭部分だけでこんなに長くなっているところを見ると永遠に終わる気がしないので分割して投稿します。続きはまたの機会に。

ところで、フランスはパリにあるGoethe Institut(ゲーテ・インスティテュート)がこの映画を題材になんとPDFファイルで50ページにも及ぶドイツ語教材を配布していたのをググってる時にたまたま見つけました。興味がある方はこれも見てみてください。

https://www.goethe.de/resources/files/pdf286/persischstunden_final_gici-v1.pdf

あと、オリジナルの予告編とドイツ語吹き替え版の予告編も貼っておきますので是非見ろください(ゴリ押し)

英語字幕付きオリジナル予告編
ドイツ語吹き替え版(フランス語の台詞がドイツ語吹き替えになってる)

「その2」へ続く

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