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英検一級単語を単語集で覚える必要はあり?なし?

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英検一級クラスの難しい(とされている)単語に関して、一般的には二つの意見をよく見かけます。

「英検一級の単語なんてネイティブでも使わない! マニア向けで漢検一級漢字のようなもの! ネイティブの友達に英検一級の単語集見せたらこんなの使わないって言ってた!」

一つ目は↑のようなものです。割とよく見かけるパターンだと思います。

「英検一級の単語はネイティブ向けの新聞や本には当たり前のように出てくる。使わないって言うネイティブは無教養なだけ。むしろこれくらい覚えてないと一般的な文章に全く歯が立たなくて話にならない。」

二つ目は↑のようなものです。これまたよく見かける気がします。

高難易度単語は覚えるべきか否か

まず、上記二つの意見のうち正しいものを選べと言われたら圧倒的に後者に軍配が上がります。ネイティブ向けの文章を読みまくっていると、英検一級の単語どころか日本人が書いた単語集には永遠に出て来なそうに思える単語も大量に現れます。

さて、ここで話題にしたいのは「このような高難易度単語を頑張って覚えるべきか否か?」ということです。

結論: 改まって覚える必要はないです

見出しに書いてしまいましたが、目的が英語力向上ならぶっちゃけ覚えるために何か特別なことをする必要はないです。何でかって?

どれだけ(試験的には)高難易度な単語でも、実際の英文を大量に読んでいて頻出するのであれば勝手に覚えられるからです。

例えば、今私の手元に英検一級パス単という単語集があるのですが、この中からいくつかの単語を紹介します。

agility, allure, fidelity, duration, accelerate, revitalize, emigrate, coincidence, tactics, alienation, ballot

これらの単語が何かというと、適当にページをめくった中で目に付いた私が既に知っていた単語です。知っていた理由は私が熱心にこの単語帳を覚えたからではなく、今まで読んだ実際の英文の中で出てきたものだからです。正確に言うと英文じゃなくてYoutuberが使ってたとか歌の歌詞だったとか例外は色々ありますが、いずれにせよ試験勉強じゃない場所で出てきたということです。

もちろん知らない単語も多々あるのですが、実は単語帳で一生懸命覚えずとも、英文を読んでいて初見の単語の意味をある程度把握できる方法があるので実はそこまで暗記に気を遣う必要はありません。

初見の単語は文脈から意味を理解しよう

またしても見出しに書いてしまいましたが、はっきり言って洋書とかニュース記事とかを英語でバンバン読んでいく場合、知らない単語が大量に出てきます。学習者向けに語彙数を絞ったものとかなら別ですが、通常は「知らない単語が出てくるのはフツー」みたいなノリで読まないと何を読んでも永遠に読み終わりません。そんなわけで、いちいち知らない単語を一つずつ辞書や単語帳で確認したりするより効率よく意味を把握できる方法が「文脈からの類推」です。

簡潔にするため、あえて日本語でやってみます。以下の文をご覧ください。

車で東京へ ( A )。

さて、ここで( A )を知らない言葉だと仮定します。この言葉の意味が分かるでしょうか。

いくつか候補が出ると思いますが、文脈からとにかく「どこかから東京に車で移動する(した)」という文意がくみ取れるはずです。では、次の文はどうでしょう。

有休をとって長野の実家に帰った。一週間ほど過ごした後、車で東京へ ( A )。

前の文章の( A )より意味が絞れたか、あるいは候補が増えた方もいるかもしれません。次を見てみましょう。

有休をとって長野の実家に帰った。そこで一週間ほど過ごした後、車で東京へ ( A )。一泊して浅草観光を楽しんでから千葉に戻った。

ここまで3つの例を見てきましたが、( A )が意味するところが文脈に応じて変化することを実感していただけたでしょうか。

ここでは2行とか3行の例文しか出しませんでしたが、実際の英文を読んでいるときは何十行、あるいは何百ページという文脈が存在しています。それをもとにある程度の意味を類推することは実はそこまで難しくありません。ただし、厳密に正しい意味を取れるとは限らないのであくまで大まかな意味が分かる、という程度です。それでも文意をとるのに支障が出るということは実はあまりありません。もちろん、文脈を理解できる程度に基礎表現が身についていることが前提条件となりますが。

それでも文脈からどうしても意味がとれない、類推すら難しい、そしてその文章を理解できないと先々の理解にかなりの支障が出る、という場合に初めて辞書を引いてみます。辞書はできれば英英が良いです。私は基本的に英英で理解できなかったら画像検索をして、それでもだめだったら英和を引くという順番でやっています。

辞書を引いて分からない単語の意味がはっきりした場合、その周辺にある他のよく分からなかった表現の意味も芋づる式にもっと正確な類推ができるようになることがあるので、調べた後はその数行前から読み直してみたりすると面白いです。

高難易度単語を単語帳で覚えようとするとどうなるか

私の記憶が正しければ、英語ネイティブの平均語彙数は3万なんぼだったと思います。ここでは簡略化のために3万ちょうどと致しましょう。

さて、ここで8000語くらい知っている英語学習者について考えてみます。この段階でこの学習者が英検一級単語を単語集で2000語覚えたとします。そうすると語彙数が1万語になり、英検一級には受かる可能性がそこそこ高くなります。

問題はここからで、ネイティブ向けの英文をガンガン読んでいく段階になると、

ネイティブ平均語彙数3万 - この学習者の語彙数1万 = 知らない語彙2万

ということで、未知の語彙と頻繁に出くわすことになります。

ここで、この学習者が英検一級の単語集を全く覚えていない頃を考えてみると、

ネイティブ平均語彙数3万 - この学習者の語彙数8千 = 知らない語彙2万2千

ということになり、やっぱり未知の語彙と頻繫に出くわすことになります。

要するに、テスト用の難しい単語を単語帳で頑張って覚えたところで(しかも文脈から切り離された日本語対訳の形で)、実用する際に未知の語彙がしょっちゅう出てくるという状態にほとんど変わりはないのです。

まさか残りの2万語も単語帳で覚える、なんてわけにもいきません。そんなことをしていたらキリがありません。

そんなわけで、ネイティブ向けの英文を実際に読んでいくにあたっては、わざわざ全ての単語を覚えるわけにも辞書で調べるわけにもいかず、初見の単語でも文脈からある程度意味を拾ってどんどん吸収していくことが必須となります。

正確に単語の意味を知らないと絶対に困る状況を考える

基本的には分からない単語が出てきても文脈から何となく意味を推測して、それでも分からない、または曖昧では困るという局面では辞書で調べていくことになります。

さて、そんな中、最初から単語と正確な意味を知らないと絶対に困る、という状況はどのようなものでしょうか。

あなたが外交官とか通訳とか物凄いレベルを要求されるプロフェッショナルならそういう状況も存在するかもしれませんが、一般的な英語学習者の場合、基本的にわからなければ辞書で調べれば事足ります。

しかし、一般的な学習者ですら辞書なしで対応を迫られる場面が存在します。

それはテストを受けるときです。

英検一級の語彙問題では文脈から空欄の意味を理解できても、そこに当てはまる単語の意味、あるいは消去法に必要なハズレ単語3つ全ての意味を予め知らなければなりません。

この時ばかりは単語の意味を事前に全て知っておく必要があります。

結局語彙は実用を通して身に着けるのが一番という話

さて、単語をがっつり覚えておかないと困るのは基本的に試験の時だけという話をしましたが、このような特異な状況は通常の英語読解の場面では発生しません。普通の英文を読んでいて単語を予め知らないと解けない穴埋め問題なんて出てきませんし、知らなくて困る状況になったら辞書を引けばいいだけです。

通常の読解と試験対策では前提が全然違う上に、対策として数千語彙を単語帳で覚えたところで記憶を持続させるのが難しくて効率が悪いですし、実際の英文を読む上で語彙が足りていないということに変わりません。

結局、英語力を向上させるのであれば、試験勉強で日本語がたくさん書かれた単語集を何度も繰り返すより、実際の英文を100ページでも200ページでも読んで文脈の中で語彙を増やしていく方が良いと個人的には思います。頻出のものは勝手に覚えますし、勝手に覚えた単語が増えていくと、新しく読めるようになったところからさらに未知の語彙の意味を推測して覚えていけます。要するに、読めば読むほど雪だるま式で語彙が増えていくわけです。

この方法だと単調な単語帳暗記と異なり、中身のある英文で情報を得たり読書を楽しんだりしながら大量の語彙を少しずつ染み込ませていくので、一度覚えたものはそう簡単に忘れません。長期的にみるとこちらの方がメリットが大きいと言えます。

個人的には、単語集で詰め込み暗記をするのは、一定期間内に英検一級などの試験に合格するのが必須、という場合だけでよろしいかと思います。あるいは、単語集の暗記が好きで好きで仕方がない、という方がもしいるのであれば、その方も単語集の暗記をenjoyされたらよろしいかと思います。

しかし、長期的に英語力を上げていこうと思ったら絶え間ない実践に勝るものは最終的にはありません。

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