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「難しい単語」という幻想

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どぶれらーの、やくせまーて? というわけで(どういうわけだ)、本日のお題は時々耳にする「高難度単語」について。

「難しい単語」なぞというものはそもそも実在するのか

です。

何をもって「難しい」というのか?

ここでは例として英語を挙げますが、「難しい英単語」とは何でしょうか。

英検1級の単語帳に記載されているものは「難しい」と捉えられるかもしれません。

しかしながら、私が今手元のKindleに入ってる「英検1級パス単」を参照すると以下のような単語が目に入りました。

heritage, tribute, alienation, alignment, axis, strive, resume, wage, conjugate, procrastinate, extravagant, frantic, cognitive, contradictory, controversial

これらの単語は英検1級単語に分類されているものの、私にとっては何も難しくありません。それは私が超人的な記憶力を持っているからでもネイティブレベルに達したからでも、メチャクチャ努力した優等生だからでもありません。単に見慣れているからです。

逆に、私が知らない単語もこの単語帳には数多く記載されています。が、私はこれらの単語を特に難しいとは思いません。単に知らないだけだからです。文中でこれらの単語が出てきたら文脈で意味をとるか、あるいは英英辞書を引くだけです。要するに今知ってる単語を知った時と同じことをするだけ。違いはというと、「これまでに見たことがあるかないか」だけです。難しいとか易しいとかそんな基準の入る余地はそもそもありません。

結局のところ、単語には2種類しかありません。ある人が「見慣れている(知っている)単語」か、「記憶が定かではない(よく知らない)単語」のいずれかです。

これを「ある人」から「一般の人」に拡大すれば、(一般的に)「頻出する単語」と「そんなに出てこない単語」に分かれることになります。基本的には後者が「難しい単語」に分類されることが多いようです。

教材の勉強しかしていないと「難しい(知らない)」単語が爆増する

基本的に英語(外国語)教材というものは学習者に合わせて使用する単語を限定しています。つまり、教材を一生懸命勉強している限り、極めて限定的な単語にしか慣れることが出来ないということです。

序盤はむしろ覚えるポイントを絞って基礎を覚え込んでいった方が良いのですが、問題はその後です。

例えば、英検1級パス単には2100の単語が載っているのですが、この単語帳をぐるぐる回したところでたったの2100の単語しか見慣れることが出来ません。例文とかにもっと色々な単語が含まれているはずなので2100よりは多くなるかもしれませんが、いずれにせよ実際に様々な文を読んだり聞いたりしない限り極めて狭い場所でうろうろするだけになります。その上、単語も例文もブツ切りで文脈も何もなく、記憶に留めるのも容易ではありません。

最初は限られた単語を覚える方が効率がいいと思いがちですが、長期的には実際に見たこと・聞いたことがある単語は多ければ多いほどいいです。

その上、単語帳で日本語訳をバラバラに覚えるのは齟齬が多い上にすぐ忘れて効率が悪いことこの上ないので、個人的には速やかに実践に移る事をお勧めしています。

日本語訳を覚えることの問題点

ところで、久しぶりに英検1級パス単を見たところ、記載されている日本語の意味が私が認識している各単語の意味とだいぶずれていることに気付きました。ずれているというか、単語の全体的な意味の極一部だけが記載されているという印象です。

例えば、↑で挙げた一覧にある"tribute"という単語には「敬意、賛辞」という訳語が充てられているのですが、私にはあまりピンと来ません。もちろんそう意味で使われる文脈もあるとは思いますが、これだけ覚えてもいいのかな、という感じです。私が最近読んだThe Hunger Gamesという小説に

I volunteer as tribute!

という台詞があるのですが、もちろんこれは「敬意」でも「賛辞」でもありません。この文脈のtributeはぶっちゃけ日本語でなんて言うのかよく分かりませんが、小説のストーリー的には「貢物」とか「生贄」という言葉がいちばんしっくり来る気がします。

ちなみにtributeでググったらいちばん最初に出てきた意味は↓でした。

an act, statement, or gift that is intended to show gratitude, respect, or admiration.

Definitions from Oxford Languages

うーん、これだと「賛辞」はともかく「敬意」は苦しいのでは?と思ってしまいます。「敬意」って"act, statement, gift"のどれでもなくどっちかというと後半に出て来る"respect"ではないですか。

2つ目にはこんな意味が出てきます。

payment made periodically by one state or ruler to another, especially as a sign of dependence.

Definitions from Oxford Languages

これは私が上述した「貢物」そのものです。

このtributeという単語に限らず、他にも違和感のある日本語訳がたくさんあります。

単語帳で覚えて試験で失敗した例

私が単語帳での単語暗記をろくにして来なかったことは他の記事にも時々書いているのですが、それでも少しは単語帳で覚えた単語もあります。

"Curtail"という単語がその一つです。これは英検一級パス単で「切り詰める」と紹介されています。

さて、私が6年前くらいに受けた英検1級の試験に以下のような問題が出ました。(問題文は処分してしまったので細かいところは記憶が違っているかもしれませんが、文脈には影響ありません)

警察は犯罪件数を( )ために尽力した。(実際には英語で書かれてましたが、覚えてないので日本語で)

さて、この( )に入る単語の候補が4択で出るわけですが、その中に"curtail"が入っていました。やったぁ、覚えたやつだ! 私は一瞬でcurtailを正解候補から外しました。何故か? だって「切り詰める」って「経費を削減する」とかその手の言葉で「犯罪件数を切り詰める」なんて聞いた事もないYO!

きり‐つ・める【切(り)詰める】

読み方:きりつめる

[動マ下一][文]きりつ・む[マ下二]

 物の一部分を切り取って短くする。「裾を一〇センチほど—・める」

 経費などを節約する。倹約する。「食費を—・める」

「切り詰める」の例文・使い方・用例・文例

  • 経費を切り詰める
  • 出費を切り詰める
  • 彼らは出資を切り詰めるでしょう。
  • 彼は私に生活費を切り詰めるようにといった。
  • できるだけ出費を切り詰める.
  • 費用を切り詰める.
  • 睡眠を切り詰める.
  • 〈費用・情報などを〉ぎりぎりに切り詰める.
  • 費用を切り詰める
  • 文章を切り詰める
  • 費用を詰める(切り詰める)
  • 言葉を切り詰める
  • 会社は費用を切り詰める必要があった
  • 持続時間を切り詰める
weblio辞書より

で、答え合わせをしたらなんと正答は真っ先に外したcurtailでした

さて、ここでcurtailの意味を英英辞書で調べてみましょう。

reduce in extent or quantity; impose a restriction on.

"civil liberties were further curtailed"

Oxford辞書より

要するに、「減らす」とか「制限する」とかそういう意味でした。これなら犯罪件数にも使えます。何で単語帳には「切り詰める」とかメチャクチャ用途が制限されるような意味が載っていたのでしょうか。謎です。てっきりそういうニュアンスの単語かと思っちゃったよ。

こんな例は枚挙に暇がありませんので、単語帳で日本語訳を覚えるという極めて非効率的かつミスリーディングな方法は避けるべきかと思います。

そもそもですが、英検1級レベルになったらもういちいち日本語と対応させる必要ないでしょう。ゼロから始めた初心者ならまだ日本語をフックにして単語を覚えてもいいと思いますが、1級ですよ。いつまでも日本語で書かれた教材に頼ってないで実際の洋書なり英文記事なり読みましょうよ、と個人的には思います。(私はというと英検2級の頃から実物に突撃&玉砕を繰り返しておりました😇 しかし、今思えば突撃の量が足りなかった気がします。)

そもそも単語をレベル分けすることに意味はあるのか?

バイオハザードの台詞で考える

さて、少し前に発売された「バイオハザード4」のリメイク版で敵の一人が↓のような台詞を吐きます。実際に聞いてみたい方はYoutubeでググって(?)見てください。

You vulgar, utterly uncivilized mongrel!

By Ramon Salazar

私はこの台詞を聞いた時、「おおっ! You以外は何だか全部レベルが高そうな単語だぞ!」とちょっとウキウキしました。

ここで、各単語がパス単に載っているか否かと、weblio辞書でどのようなレベルに分類されているか見てみましょう。

単語パス単に載ってる?weblioでのレベル
vulgarYesレベル:6英検:準1級以上の単語学校レベル:大学以上の水準TOEIC® L&Rスコア:730点以上の単語大学入試:最難関大対策レベル
utterlyNoレベル:5英検:2級以上の単語学校レベル:大学以上の水準TOEIC® L&Rスコア:600点以上の単語大学入試:難関大対策レベル
uncivilizedNoレベル:15
mongrelNoレベル:14
2023/8/31時点

vulgarは英検1級単語のようです。パス単にも載ってます。

utterlyは私はこの台詞聞くまで大して知りませんでしたが、英検2級単語だったそうです。私準1級持ってるんですが知りませんでした😇 まぁこの手の程度を表す副詞って読むときテキトーに飛ばしても文脈理解にそこまで影響しないんで見落としてたんでしょう・・・。

uncivilizedは一番簡単そうだと思いましたがレベル15だそうです。

mongrelは見た感じuncivilizedより意味を掴みにくい気がするのですが、レベル14です。

で、これらの単語をレベル分けして何かいいことがあるでしょうか? vulgarとutterlyは試験に出そうだから覚えよう、uncivilizedとmongrelは覚えなくていいや。とかそんな感じになるのでしょうか。よく分かりませんが私は台詞ごと覚えてしまいました。

このRamon Salazarという敵キャラは他にも

"Such a fool, Mr. Kennedy!"とか"Die! Die! Die!"

とか人を煽るときに大変使い勝手が良さそうな台詞を連発してくれます😂

しかしDieってドイツ語の定冠詞にしか見えない

もう一つ、今度はもっとちゃんとした(?)例を見てみましょう。

ハーバードのプログラミング教材で考える

さて、今度はゲームの台詞一つではなく、もっとがっつりした文書で考えてみます。

以下↓は私が最近復習しているハーバード大のcs50ai(AIの基礎コース)の4週目(よく見ると実際は5週目なんですが😇)の授業ノートです。

これ

印刷するとA4用紙17枚になります。このノートを読んでる時に意味がはっきり分からなかった単語がいくつかあったので↓の表に再度まとめます。

単語パス単に載ってる?weblioでのレベル
discreteNoレベル:10 英検:1級以上の単語学校レベル:大学院以上の水準
speedNoレベル:1 英検:3級以上の単語学校レベル:中学以上の水準TOEIC® L&Rスコア:220点以上の単語
pruneYesレベル:8 英検:準1級以上の単語学校レベル:大学以上の水準TOEIC® L&Rスコア:860点以上の単語
coefficientNoレベル:11 英検:1級以上の単語
leewayYesレベル:16
utilityYesレベル:4 英検:2級以上の単語学校レベル:高校3年以上の水準TOEIC® L&Rスコア:470点以上の単語大学0 入試:難関大対策レベル
empiricalNoレベル:10 英検:1級以上の単語学校レベル:大学院以上の水準
lossyNoレベル:21
succinctYesレベル:11 英検:1級以上の単語
infeasibleNoレベル:18
equilibriumYesレベル:8 英検:準1級以上の単語学校レベル:大学以上の水準TOEIC® L&Rスコア:860点以上の単語

今日日小学生でも知ってそうなspeedが分からなかったのが非常に笑えるのですが、なんか動詞で出て来て"sped"とかいう形になってたんですよ。十中八九speedの過去形だろうと思いつつも自信なかったんでなんか別の単語かもしれないと思ってつい調べてしまいました。

というわけで、これら11個の単語は私がよく知らなかったor文脈から意味をとりつつもあんまり自信がなかった単語です。英検1級単語もあり、weblioレベルはspeedの1からlossyの21まで広範囲に渡ります。

これらの単語を上記の通りレベル分けしたわけなのですが、さて、このレベル分けによって私が得るメリットは何でしょうか?

結論から言うと何もありません。

17ページ分の文章の中に知らない単語が11個しかなかったので、講義ノートの内容理解は何も調べなくても問題なく出来ました。しかし、もし知らない単語が50個も100個もあったら文意を理解できるまで意味を調べるしかありません。いずれにせよ、英検1級に出るとかレベル15だとかそんなのは基本的に関係ありません。

結局のところ、語彙数が極端に少なくて頻出単語を優先的に覚える必要がある序盤はともかく、中級以降では「知ってる単語」と「知らない単語」以外のカテゴリは特に必要ないと思います。

仮に英検1級の単語を単語帳で全部覚えたとしても、weblioのレベル12以上(weblioで英検1級より上のレベルに分類されている)の単語も実際の英文にはゴロゴロ出て来るので、結局最後は実物に出て来る膨大な量の知らない単語と相対することになります。どうせやるなら最初からそうした方が早いと個人的には思います。

余談

私が単語帳を真面目に覚えることはほぼないのですが、英検1級パス単はずいぶん前に電子書籍で買って放置してあります。Pythonを覚えた初期の頃に任意の英単語を入力するとこの単語帳に掲載されているか判定してくれるプログラムや、英文テキストファイルを放り込むとその中からこの単語帳に収録されてる単語だけ抜き出してくれるプログラムを作成したりもしました。

こんなん

これにより、索引をひっくり返すことなく英検1級単語かどうか判定したり、ネット上に転がっている実際の英文を使って英検1級単語を学習することも可能となりました。このブログの記事を書く時に割と役立ちます。(というかここでブログ記事書く時以外、ある単語が英検1級単語かどうか分類する必要性が特にないのでほぼ使ってないのですが。もし今後、英検1級取得目指して勉強する!とかそういう気分になったら使うかもしれません。)

Pythonは私が英語だけで学んだものの一つです。プログラミングに関してはオンラインに英語の教材が大量にあるので、わざわざ日本語圏で金を積んで入門書とか買う必要は特にないです。この方法なら英語とプログラミングを同時に学べるのでオススメ。

まとめ

実際に英文(あるいは他の学習言語の文)と触れている間に頻出する単語は、例えそれが英検1級の単語帳に載っていようと、Weblioでレベル21にされていようと必要ですし、すぐに見(聞き)慣れるので何も難しくありません。

英語教材を延々とやり続けなくても、実際の英語を聞いたり読んだりしまくっていけばいずれは見慣れた単語、聞き慣れた単語が多くなっていきます。この方法には、一生懸命覚えなくても多量の単語が自然に頭に畳み込まれるという利点があります。が、ある程度時間が必要で試験前の一夜漬けみたいに一朝一夕に結果を出すことは出来ません。その分記憶には定着しやすくなります。

英語に関して私はここ最近ポジティブな結果を一応出せているので(インド英語聞き取れなくて爆死した件を除く😇)、実践推しにも多少は説得力が出てきたかなと思います。

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